
脂肪組織由来幹細胞とは
脂肪組織の中に、ごく少量だけ含まれる幹細胞、それが「脂肪組織由来幹細胞」です。皮下脂肪を構成する脂肪細胞とは、まったく異なる細胞です。間葉系幹細胞と呼ばれる生体内にもともと存在する幹細胞の一種であるこの脂肪組織由来幹細胞は、非常にユニークな性質を持っています。様々な疾患に対して高い治療効果があることが研究されており、再生医療を担う高いポテンシャルを有する有望な幹細胞です。
・免疫や炎症の異常を調節して、正常に戻す能力がある(免疫調節作用)
・組織の損傷部位に集まる能力がある(ホーミング効果)
・様々な機能性物質を分泌し、近隣の細胞に働きかける能力がある(パラクライン効果)
・少量の皮下脂肪から幹細胞を分離できる
・他の組織と比べて、多くの数の幹細胞を採取できる
幹細胞療法 ー 損傷を受けた組織を修復して老化の予防をめざす
幹細胞は、自分のコピーを作る能力(自己複製能)と、骨、軟骨、肝、神経、心筋などのさまざまな細胞に変化する能力(分化能)を持っています。さらに、幹細胞は、傷ついた組織を修復するサイトカインやマイクロRNAを含むエクソソームなどを分泌しています。これらの働きで、傷つき機能低下した細胞を元気な新しい細胞にして、組織を再生します。
幹細胞療法は、この組織再生の働きで、これまで有効な治療法がなかったさまざまな病気に対して、治療効果が期待されています。
こんな病気・症状に効果があります。
この他にもいろいろな可能性がありますので、お困りのことについてご相談ください。
肝障害
肝臓の機能が障害されている状態を『肝障害』と呼びます。
肝障害の主な原因は:
・ウイルスによる肝炎
・お酒の飲み過ぎによるアルコール性肝障害
・薬剤の服用によって起こる薬物性肝障害
・自己免疫の異常による自己免疫性肝障害など様々です。
最近はお酒をあまり飲まない人でも肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧などのメタボリック症候群に伴う脂肪肝も問題になっています。原因は違っても、放置することで知らない間にさらに重い疾患に進展していく場合があります。
関節傷害
加齢や運動でのストレスなどで関節の軟骨に傷がつき炎症が引き起こされると、関節に痛みや腫れを生じます。ひどくなると痛みに加えて関節が変形して手術が必要になります。当院でおこなっている幹細胞治療は、傷ついた関節を修復し、炎症を抑えて痛みを改善します。また、幹細胞上清液ステムサップ®による修復医療は、関節リウマチによる慢性的な関節の炎症の軽減にも効果を認めます。
慢性疼痛
6か月以上続くがんによる痛み以外のつらい痛みを持ち、慢性疼痛と診断された患者を対象に幹細胞を投与する治療が試みられています。
これまで、慢性疼痛には、非ステロイド性消炎鎮痛薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、麻薬性鎮痛薬などが使用されています。最近では、疼痛治療剤リリカなども使われるようになっています。しかし、使用が許可されている薬剤やその使用料では十分に痛みがコントロールできていなかったり、副作用で使用を継続することが困難であったりします。
幹細胞は副作用をほとんど引き起こすことなく、疼痛の原因となる慢性炎症を抑え、神経再生を促し、血流を適正化するという能力で疼痛を改善します。
これらの能力により、従来からの疼痛治療に併用して、幹細胞を投与するという新たな治療の選択肢が出てきています。
幹細胞療法の手順
ご自身の腹部の脂肪を採取し、その中から幹細胞を分離・培養して体に戻す治療です。
診察・相談
電話、メールなどで診療の予約を取ってからご来院ください。
担当医の診察をうけ、これまでの治療を確認し、現在の障害の程度や病状の進行具合などに応じて幹細胞治療の適応など、治療方針を相談します
脂肪採取
患者様の腹部から約10~20 gの脂肪組織と培養時の栄養分をとるための血液(30~60 ml)を採取します。
脂肪組織から幹細胞を培養するために、国の許可を受けた細胞培養加工施設に検体を運びます。
細胞培養
細胞加工施設(CPF;Cell Processing Facility)において、厳密な管理のもと、脂肪組織由来幹細胞を分離、培養します。初回治療に必要な細胞数を確保するための培養期間は、およそ6週間です。2回目以降は凍結保存された幹細胞から培養し、投与までは約2週間の培養期間でおこなうことができます。
投与・評価
培養した幹細胞を関節に注射いたします。
担当医と相談したスケジュールで、投与後の経過観察をおこないます。・治療期間・回数
肝障害・慢性疼痛では1年間に3回の治療を、関節傷害では2回の治療を目安としますが、1回から治療可能です。
追加の治療は、症状や検査結果などに応じて診察時にご相談いたします。
・費用(税込)(※金額は症状や治療プランなどにより変動します。)
肝障害・慢性疼痛に対する点滴治療初回 :4,400,000円 (※脂肪採取と初回の幹細胞投与を含みます。)
肝障害・慢性疼痛に対する点滴治療2回目以降 :3,300,000円
・考えうるリスク・副作用
<脂肪組織採取に伴うもの> 内出血、腫脹、術後感染、術後瘢痕など
<幹細胞投与に伴うもの> 注射部位の痛み、アレルギー反応、肺塞栓など
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